第6章 気になる彼の形と私の色
「そんなの今は望んでない。 オレが来るから。 さっきオマエの母親が言ってたみたいな女の体のことは分かんねえけど、そんなら余計に自分の彼女のために動くことは苦でもなんでもない。 時間を使うことも」
俯いてる私の頭の上に、しんしんと降ってくるのはタクマさんの優しさ。
ぽた、と自分の手の甲にまた涙の雫が落ちて、余計に顔を上げられなかった。
「……むしろなるべく会おうって、言い出したのはオレの方。 だから、オマエも会いたくなったら、ひと言言えばいい。 泣きそうんなったら呼べばいい。 出来るだけのことはする。 それが今のオレの役割な。 理解できるか」
私もなにか言いたかったけど、言えなかった。
彼の思い遣りに見合う言葉が見つからなかった。
こくり。 俯いたままただ頷くと、頭の上に乗っけられたタクマさんの手のひらの感触がした。
「よし、今日の話は終わり。 なんか飲み物いるか。 食いもんは? それとも休むか」
そう言った彼がすっと立ち上がった気配がして、離れかけた彼の手を咄嗟に握った。
ん? と私を見下ろしたタクマさんと久し振りにまともに目が合ったので、きゅんと胸が高鳴なった。
「一つお願いしてもいい? ぎゅって……したい」
タクマさんが一瞬、少し考える間を空けてから私に手を伸ばしかけて引っ込めて、「も少し、前に行け」とベッドで起き上がっている私の後ろへと回る。
背中にタクマさんの温かな胸が当たり、両腕がふわりと私を包んだ。
「こっちにもたれたら楽だろ」
楽だし、これはかなり、幸せかも。
あと、密着度が高過ぎて、自分の心臓がうるさい。
緩く私のお腹の前で組まれた彼の手にそっと触れて、そしたらその上に外した親指を重ねてきた。