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朝凪のくちづけ【R18】

第6章 気になる彼の形と私の色



ここに居る人たちの中で、私だけが『こなせてない』ような気がした。

母は仕事と家事をしている。
父はいつも遅くまで仕事をしている。
タクマさんだって、一週間の仕事を終えてちゃんと迎えに来てくれた。


「今、何時……」時計に目をやる前に、夜の11時。 と、タクマさんが教えてくれた。


……八時に迎えに来てくれるって聞いてたから、スムーズにいけば、向こうに着こうという時間だった。



「とにかく綾乃、明日は病院に行きなさい。 拓真くん。 申し訳なかったね」


「いや、オレの方も……」



そんな二人のやり取りを聞いてこらえ切れずにボロボロと泣き出してしまった私に「綾乃」母が呼んで、再び私の手を両手で包む。



「ごめんね。 お母さん、昨晩、もう少し話をしておけばよかったね? 怖かったね? 綾乃の気持ちは分かってたけど、疲れてるみたいだったから。 でも、綾乃ぐらいの歳の女性って、まだ、心も体も不安定なんだよね。 お母さんもそうだったんだよ。 それは仕方が無いの。 大事にしよう、ね?」


「………っ、ぅ…ッ」



優しい、優しい、私の両親。
だけどなにより。
タクマさんに甘えた自分を見られているのが恥ずかしかった。

それなのに、止まらない。



「ごめ……ん、なさい……」



「泣くな綾乃」



突如強い口調で室内に響いたタクマさんの声に、私の昔からの習性なのか。

反射的に、ひくっ…と涙が止まった。



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