第6章 気になる彼の形と私の色
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「まあ、昔っからバ…一生懸命なとこは長所なんだろうな」
「この子ったら、夢中なものに関してはバ…耳に入らないほどなのよね」
「おそらく私譲りに専門バ…研究熱心な性質なんだろうね。 欲は才を走らせる火のようなものだとも言うが、な」
「司馬遼太郎と才が聞いたら、ケツに火付けられますよ」
「ふふ、相変わらず読書家だね。 拓真くんは」
気のせいか、失礼なことを言われている気がする。
あ、でも。
「タクマさんっ!??」
たしかにそう聴こえた。
がばっと身を起こそうとしたら同時におでこに指先が当たり、ぽすん、とまた後ろに体を倒された。
「やっと目覚めたか。 少しだけ、顔色良くなったか。 でもまだ起きんな」
八畳の私の部屋に、タクマさんと父と母がいた。
……状況が呑み込めない。
私のベッドの脇にいたタクマさんが離れて、部屋の隅にある、机にしつらえてある椅子に腰をかける。
「まあ、オレの説教はあとにして、だ」
その代わりに、私の枕元に進み出たのは母と父。
「ちょうど綾乃が倒れた先が、お父さんの事務所のすぐ近くだったから良かったのよ。 バイト先から連絡をもらって、すぐに迎えにいってもらったの」
「時間が時間だったしうちの産業医に診せたが、ストレスと過労だそうだ。 点滴は打ってもらったが、最近、睡眠や食事はまともに取れてたのか? アルバイトばかりで、休みもろくになかったそうじゃないか」
心から心配してる様子の両親から、なにがあったのかは把握した。
「……それから、家庭教師の話も母さんから聞いたよ。 拓真くんに少し話したが。そんなに一気に、色々とこなせるわけがないだろう?」
「そんなことないよ……」
そう言った声が少しだけ震えた。