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朝凪のくちづけ【R18】

第6章 気になる彼の形と私の色




「つ、爪? あの……お母さ」


「親知らずを麻酔無しで抜いてあげるとか、ふふ。 罪を思い知らせるための人道的な方法はいくらでもあるのに……」


「お、お母さん?」



中世の拷問だろうか。


そういえば昔から、本当に怒ると怖いのは母である。

これはむしろ父に相談した方が良かったのかもしれない。



「とにかく、この件はとりあえずはお母さんに預けておきなさい。 今晩はお父さんも帰りが遅いから……明日からはデートなんでしょう? 今日は早く休みなさい、ね?」



そんな母に曖昧に頷き少し心が落ち着いた。
本当はタクマさんにも言った方が良いのだろうけど、そんな込みいった話は会ってからにしようと思った。

母とタクマさんは、父程は面識がないみたいで、「見たら思い出すかも? でも、お父さんが選んだ人だものね」そう言って、タクマさんに会うのを楽しみにしている様子だった。





****

次の日は寝不足のせいか、なんとなく気分も浮かないままチョコレート屋さんのアルバイトに出掛けた。


それにしても、なんだって今年の残暑はこんなに過ごしづらいんだろう。
蝉の音さえもう、元気がなく疎らに耳に届く。


通りのショーウインドウで自分をちらっと見ると、なんだか姿勢も悪いし疲れてるような?

こんなんじゃ駄目だ。
せっかくタクマさんに会えるっていうのに。


バイト先に到着してバシャバシャと勢いよく顔を洗い、そしたらちょっとスッキリした。



「……森本さん?? 何してるの」


背後から話しかけられてふと顔を上げると、鏡越しにこないだ話しかけられたバイト仲間の子が映っていた。


「……? 顔、洗ってて」


「それ顔拭いてるの、ハンカチ? 髪と服ビショビショだしファンデ付けてないの?」


「うーん? トイレットペーパーはさすがに、顔に付いちゃうよね?」


白いポロポロのが。

暑いからそのうち、乾くと思うんだけど。
日焼け止めはしてるけどメイクもしてないし。



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