第6章 気になる彼の形と私の色
私が通っているのはタクマさんが行ってたみたいな立派な国立大学ではないとはいえ、中学生ぐらいなら勉強の内容も問題なく、それについては安心したものの。
「終わったよ。 これでいい?」
今度はツンツンと脇の辺りをシャープペンの後ろでつつかれ、思わずビクリとしてそれを避ける。
「……そういう、勉強と関係ないことしたらダメだよ。 でも……うん。 ちゃんと出来てるね。 これならテストで間違えたところも合ってたはず。 今日はこれをもう少し続けようか」
それでも、「つまんない授業だね。でも、森本センセのは分かりやすいや」などと言いつつ彼は素直にやることはやるので、私としても対処法が分からない。
「数学はつまんなくないよ。 よく分析して、仮定して、一つ一つが、謎解きみたいなもの。 答えがあってたら、卓摩くんの勝ちだよ」
「ふうん。 勝ち……かあ」
カリカリと彼がペンを動かす手が早くなる。
ミスが多いだけで、多分、元は勉強の出来る子だと思う。
そんな調子で二時間が経った。
家庭教師の派遣先から提供されている、進捗に応じた宿題を卓摩くんに渡した。
「もう帰っちゃうの?」そんな風に寂しそうに言うので、「かなり進んだと思うよ。 来週のテストの結果分かったら、教えてね」と言いながら戸口のノブに手を掛けたとき。
いきなり、後ろから両胸をむぎゅっ!!と鷲掴みにされた。
「っっ! きゃああああああっ!?」
「わあっ!?」
あまりにも驚いて大声をあげてしまった私に驚いたのか、卓摩くんの方もびっくりした様子で私から飛びのいた。
「な、何ごと? どうしたの!?」
当然慌てた様子で彼の母親が部屋に入ってくる。
そしてしゃがんでうずくまっている私と、傍に立っている卓摩くんを驚いた様子で交互に見た。
「……森本先生? 卓摩、一体なにが」