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朝凪のくちづけ【R18】

第6章 気になる彼の形と私の色




「……まあ、家は確かに貧乏ではねえんだし、悪いことじゃねえだろ。 人生案外、ハッタリは大事だよな」



家庭教師先での話をして、育ちのいいお嬢さんなんかじゃないんだけどなあ。 そう唸る私にその夜に電話をしてた、タクマさんがスマホの向こうで笑った。



「タクマさんも、私のことそう思う?」



帰ったなり、色んな人と会いすぎて疲れたんだろうか。
ずっと熱っぽい感じのする頬に手を当てた。



「今さらか。 スレちゃねえけど、素朴ってタイプだろ。 こっちじゃ大概ジャージみたいなカッコしてるし。 なんにもしねえで、砂浜で何時間もボーッとしてる女なんか見たことねえな」



うーん。
やっぱりタクマさんと話してると安心する。
褒められてるわけでもないのにほっと、心がほぐれてくような。



「ところで、バイト忙しそうだから遠慮してたけど。 週末か来週末空いてるか?」


「……うんっ! 会えるの!?」



アルバイトは大事。
けれど、それはタクマさんがいるからだ。

そして車を持って昼で講義が終わったら。
そのまま向こうに行って、仕事帰りの彼のためにご飯を作って待ったりして。

サンキュ、助かる。 綾乃はいい嫁さんになれるななんて。 褒められたり、撫でてくれたり。



「ん、なんだ? 気持ち悪い笑い声が」



でも、ふと、こんな彼の言葉も思い出したりする。



『──────中学ん時母親が事故で死んで』



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