第6章 気になる彼の形と私の色
それから一週間ほど経って、アルバイト先のチョコレート屋さんで帰り支度をしている時だった。
夕方の7時。
お店の閉店とともに片付けを終えた他の子たちが、控え室で慌ただしく着替えている私に話しかけてきた。
「森本さん、最近よくシフト入るよね。 あんなお嬢様大学なのに」
本命の大学に落ちちゃったんだよ。
お父さん、ごめんなさい。
「そうなんだー? いつも清楚系だよね。 そのワンピ、セシルだよね!?」
タクマさんがワンピース好きって言ったからだよ。
ちなみにこれは、おばあちゃんからの進学祝い。
別に彼女たちとは普段から取り立てて親しいわけでなく。
心のなかでモゴモゴと返事をするも、次のアルバイトまでの時間が無かったので、曖昧な返答をして私は早々に職場をあとにした。
「なんか、避けられてる?」
「さあ……育ちがいいと、やっぱりうちらとは世界が違うんじゃないの」
廊下を早足で歩いてる時に、そう言ってる女の子たちの声が聴こえた。
『こんな育ちの良さそうなお嬢さんに来ていただけて』
今から行く家庭教師先でも先方の親御さんに初っ端にこんなことを言われたっけ。
相手は中学生とはいえ、家庭教師で働くのは初めてで緊張はするけど、大学でも教職は取るつもり。
今は少しでも将来の働き先の幅を広げておきたいから。
その予行演習だと思うと頑張れる。