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朝凪のくちづけ【R18】

第5章 侵食を繰り返す荒波の記憶




「構わない。 男のが体力あるのはそういう時のため……って、これは、お前の父親からの受け売りな」


「確かに……うちのお父さんも色々やるけど」



愛妻家でかつ料理上手。
大工仕事でもなんでもござれ。

……タイプ的にもしかして、タクマさんと似てるのかな。

やだな。
もしかして私、ファザコンなのかなあ。



「寝坊したな。 オレも昨晩本読んでたり夜更かししてたから。 シャワー借りていいか? 昨日料理したし汗かいて、ベッド使うのは遠慮させてもらった。 積んであったタオルケット二枚借りたけど」


「あ、案内するよ。気を遣わせてごめんね。 そしたら、上がったら海へでも散歩しに行って、遅めのブランチでもどうかな?」


「OK」



こんなやり取りがスムーズにいくのは、むしろ彼氏彼女じゃなかった期間が長かったせいだろうか。


『異性云々の前に、人間として』


だからタクマさんは私を選んでくれた。

それはそれで、無意味なことではなかったらしい。



「帰りは車で送る。 メシのあとまた迎えにくるから準備しとけよ。 昼過ぎに出れば、渋滞避けて夕飯前には家に着けるだろ」



そう言いながらタクマさんがソファに引っ掛けていたTシャツを被り、立ち上がって伸びをする。


そうだった。

彼は明日から仕事なんだ。


一瞬また気分が落ちそうになったけど、彼と余分に丸一日過ごせたんだ。

これ以上は贅沢というものだろう。

タクマさんだって、なにか用事があったかも知れないのに、私のために時間を割いてくれた。



「タクマさん。 私、電車で帰るよ」


「ん? 遠慮すんな」


「大丈夫。 慣れてるし、渋滞は都内の夕方がひどいんだよ。 駅まで送ってくれたら、すごく嬉しい」



だって東京まで送ってもらってまた戻ると、彼が家に着くのはおそらく夜の遅い時間。
今日はゆっくり家で休んで欲しかった。



「そっか。 オマエがそう言うんなら」



優しい人が相手だと、私まで優しい気持ちになるのが不思議。


いつもこんな風に過ごせればいいと思う。




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