第5章 侵食を繰り返す荒波の記憶
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テラスで過ごした私たちの夜は楽しく更けていった。
タクマさんはいつもよりもお喋りで、それが野外での食事というシチュエーションのせいなのか。
数本の缶ビールのせいなのか。
もしくは私のせいなのか←
それは分からないけど、大概の時間、屈託なく笑みを浮かべてる彼もまた、とても魅力的に思えた。
永遠にでも続いて欲しい、その記憶がぷつりと途中で途切れたのは本当に、惜しいことをしたんだと私はのちのちも後悔することになる。
「───────ううーん………ん?」
普通に、別荘の自室のベッドの上で私は目覚めた。
窓から差し込む光は明るく、頭が完全に起きる前に体を起こして床に足をつける。
昨晩、あれからどうしたんだっけ?
タクマさんは?
慌てて父のベッドルームを確認するも、もう一つあるゲストルームを覗くも、彼の姿はなく。
「…………っと」
なんどか往復していたリビングの廊下。
その室内に踏み入って、初めてソファの上で眠っている彼に気付いた。
あんまり静かに寝ているものだから。
ついでにキッチンを見回すと昨晩の食器類がきちんと片付けられていた。
もしかして居ないかも、なんて焦ってしまった。
安堵しつつそっと彼の方へと近付いていく。
ん?
よく見ると、彼は上半身に何も着ていない。
タオルケットに挟まれてはみ出てる脚から観察するに、短パンは履いているみたいでそれは残……でなくて、ホッとした。
でも、なんというか。
「逞しいんだ……」
思わず小さく呟いてしまった。
ムキムキとまではないけど、肩や二の腕の盛り上がりとか胸の厚さ。
いつもは大きめのTシャツなんかを着てるから、分かりづらかった。
いかにもヒョロい日本人体型の私の兄とは大違い。