第4章 半径一メートルの密度
それで私は彼の手首から力を抜いて、顔を逸らしてゆっくりと目をふせた。
さすがに今、見詰め合う勇気まではなかったから。
シートに体が沈んで衣擦れの音が聴こえる。
私の指先を、彼の腕が通り過ぎてくのが分かった。
外側の腿を撫でられてる。
先ほど頭をそうされたのと同じような優しい感じだった。
それがお尻の辺りに来るたびに、ビクッてなる。
そんな私の反応が止むまで、タクマさんが手の中で温めるように撫で続けた。
外ではひぐらしが鳴いている。
虫の声に時々混ざる私の、ため息交じりの吐息。
こんな時、震えるのはなんでだろう。
怖いから?
気持ちいから?
それがどちらか分からなかった。
やがてスカートの中で下腹と恥骨の間に伸ばされた指先が四方に散り、意志を持ったその中の一本がショーツの縫い目の辺りに伸びる。
それがつつと奥へと進むたびに、私の肩が揺れた。
「濡れてる」
そんな事実だけをいつもの声でタクマさんが伝えてきて、そしたら閉じていた瞼は余計開けられない。
声のした方向から、まだ見られてるような気がする。
それだけでも膝が揺れ続けていたのに、一旦そこから抜かれた手が私のお腹に直に触れた。
「あ、ダメっ……」
今度はさすがに阻止しようと身体まで捻った。
でも私の思惑に反し、その方向に合わせて容赦なくショーツの中に手が潜り込む。
「………っ!」