第4章 半径一メートルの密度
何も言わずに視線を自分の指先に移し、タクマさんが触れ始める。
肩に戻り、形を確かめるように薄生地の中の私の皮膚に彼の感触が伝わってくる。
鎖骨に沿った指は横に滑り、手の甲がまた胸に触れ、その側面が膨らみを持ち上げて、そのあと全体をすっぽりと包んだ。
「……時々、結構凄いこと言うよなオマエって」
上手く、話せなかった。
私の吐息ばかりが車内に響いて。 身体を離し手を伸ばしたタクマさんが私を探り続ける。
親指が胸先の辺りで止まり、下から上に撫で上げる。
「……っや」
そうされると、ひくん。 と反射的に背が反った。
ブラも着けてるのに、見付けられて触れ続けられる胸の頂きは、まるでとても細い針で刺されてるような感覚を運んでくる。
我慢できない声が出そうで、私は自分の手で口を塞いだ。
「あ……タクマ…さ」
「なに?」
「そこ、もう……いいから」
「確かめろって言ったのはそっち」
私今、どんな顔してるんだろう。
タクマさんが視線を戻し、胸から手が離れた。
ジクジクとした熱さも冷めないままで、でもどこかで安堵してる。
ほう、と息をついてすぐにタクマさんが少し体を傾けてきた。
なにか言おうとする前に、今度は私の腿に触れる。
思わず彼の手首をつかむとその動きは容易に止まった。
相変わらずタクマさんは私の表情に見入っていて、選択肢を私に委ねようとしているみたいだった。
言い出したのは、私。
分かって欲しくて。
抱き合わなくても、私を感じて欲しくって。