第4章 半径一メートルの密度
「ああ。 だから、付き合うのには全く抵抗ない。 ……とはいえ、自分に懐いてる犬っコロみたいなのが、毎年女になってくのって、なかなか微妙っつか。 ずっと見ていたいような気がするし、目ぇ逸らしたくなる時もある」
分かるような、分からないような。
でも、きっと分からなきゃ駄目なんだろう。
「綺麗んなったとか可愛いとか、確かに思う。 でも同時に、オマエの父親があやしてた綾乃も可愛かったよなとか、ふと頭によぎるんだよな。 そういうのって、どうよ?」
「そう言ってもらえると、すごく分かりやすい。 由々しき問題だよね」
キスしてる時に私のおむつシーンとか思い出されたら、思い出される方も絶対笑え……でなく、萎えちゃいそう。
「だから、もっと会いたいってのもそういう理由。 自然に、ピッタリ自分の中で綾乃が女になるように。 あとこう言っちゃなんだけど、オマエ男と付き合ったことないんだろ? 大事にしたいと思ってる」
……遠くなったり近くなったりするタクマさん。
でも私は、この人で良かったとやっぱり思う。
私と全く違う過去。 目線や考え方。
それでも、こうやって心を砕いてくれる彼が好きだもの。
私の方にある側の彼の手を両手で、握る。
タクマさんがなんだ、とでも言いたげに目で問いかけて、私はそんな彼をじっと見詰めた。
「……手ぐらいは良いんでしょう?」
それを自分の頬に当てて、すると手のひらの熱が肌を包む。
すくった手を首すじから、胸に持っていった時にピクリとそれが動いて、だけど私はそのまま自分の鼓動の上に置いた。
「私だよ。 成長してもずっとタクマさんのことが大好きな私。 いくら時間がかかってもいいけど、ちゃんと全部に触れて、確かめてみて?」