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朝凪のくちづけ【R18】

第4章 半径一メートルの密度



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この辺りのスーパーといえば、二軒。

衣料品なども取り扱っている、大型スーパーと、地元の小さなもの。


後者のスーパーへ駐車したタクマさんは、やはりデキる男だと思う。
こちらの方が食材が安くて新鮮だからだ。



「さすが、私のタクマさんだね!」


「……なんだソレ。 いつからオレはオマエのモンなんだよ」



含み笑いをして駐車場に降りたタクマさんの言葉が、チクリと胸に刺さった。
以前までは、彼のそんなツッコミなんて気にならなかったにも関わらず。



「綾乃?」



彼が不思議そうに振り向いて、私に向かって手を伸ばす。

これは、屋外なら触れても構わないということだろうか?

そこにそろそろと手を載せると、彼がぐっと繋いだ手を引き寄せて、駐車場を歩く。
私の頭がタクマさんの肩に当たった。
タクマさんの手はおっきくて、やっぱりあったかい。


「家の外では近付いてもいいの?」


「は? ……ああ、あれ見てみろ」



ふい、と彼が指した顎の先を見ると、スーパーに入る小さな横断歩道の脇に『子ども飛び出し注意!!』という立て看板があった。



「あの私、子供じゃないよ?」



くくくと笑うタクマさんに、なんだか少しだけ、悔しいような妙な気持ちになった。



「んなこと、分かってる」



分かってるんだったらなんで、彼はそんなことを言うんだろう。



「手ぐらいはいい、別に。 単に危ねぇから心配なだけ」



そして私はなんで、こんなことで泣きたくなるんだろう。



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