第4章 半径一メートルの密度
****
この辺りのスーパーといえば、二軒。
衣料品なども取り扱っている、大型スーパーと、地元の小さなもの。
後者のスーパーへ駐車したタクマさんは、やはりデキる男だと思う。
こちらの方が食材が安くて新鮮だからだ。
「さすが、私のタクマさんだね!」
「……なんだソレ。 いつからオレはオマエのモンなんだよ」
含み笑いをして駐車場に降りたタクマさんの言葉が、チクリと胸に刺さった。
以前までは、彼のそんなツッコミなんて気にならなかったにも関わらず。
「綾乃?」
彼が不思議そうに振り向いて、私に向かって手を伸ばす。
これは、屋外なら触れても構わないということだろうか?
そこにそろそろと手を載せると、彼がぐっと繋いだ手を引き寄せて、駐車場を歩く。
私の頭がタクマさんの肩に当たった。
タクマさんの手はおっきくて、やっぱりあったかい。
「家の外では近付いてもいいの?」
「は? ……ああ、あれ見てみろ」
ふい、と彼が指した顎の先を見ると、スーパーに入る小さな横断歩道の脇に『子ども飛び出し注意!!』という立て看板があった。
「あの私、子供じゃないよ?」
くくくと笑うタクマさんに、なんだか少しだけ、悔しいような妙な気持ちになった。
「んなこと、分かってる」
分かってるんだったらなんで、彼はそんなことを言うんだろう。
「手ぐらいはいい、別に。 単に危ねぇから心配なだけ」
そして私はなんで、こんなことで泣きたくなるんだろう。