第4章 半径一メートルの密度
……こういうこと、今まで訊いたことは無かったけど。
「……タクマさんって、今まで誰かと付き合ったり?」
「なに、いきなり。 フツーそんなこと訊くか?」
「良いから。 気にしないよ」
だって、こんな彼がどうやって人と関わってきたのかと、それが気になったから。
うーん。って、タクマさんが頭に手をやって、あんまり楽しくなさそうな表情を浮かべる。
「……まあ、それなりに……オレが愛想無さ過ぎて、長続きはしねぇよな」
そしてそうだろうなと、納得した。
きっと相手の人は、今の私と同じ気持ちになったのもあるだろう。
ずっと私は単に、彼を優しい人だと思ってた。
でも本当は自分のことなんか省みないで、それを気にも止めずに生きてる人なんだと気付いた。
……私とは、全然違う。
タクマさんは朝食べないからか、その分お昼はよく食べるらしい。
三人前用意してあっという間に減っていく。
「フーン。美味い。 オマエいい所のお嬢さんだから実はこんなのは期待してなかった」
私が作ったのは父が作ってくれたベーコンとありあわせの野菜で作ったシンプルなパスタ。
早い速度でフォークですくってはそれを口に運び、咀嚼が止まない彼の口元を眺めていた。
「本当? この辺りお野菜が美味しいから、大して味付けしなくても充分なんだよね」
「魚も美味いけど……外にやたら立派な外国製のグリルあったな。 そういや」
「うん。 ピザも焼けるんだよ。 夜にバーベキューでもする?」
「何だその楽しそうなイベント。 じゃ、あとから買い出し行くか」
その楽しいはずの彼との時間。
だけどなぜか、私の気は重かった。
彼が今までになくとても遠く感じる。
初めてだった。
タクマさんを、怖いなんて感じたのは。