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朝凪のくちづけ【R18】

第3章 ハチミツ味のSavage CAFE




「……タクマさん?」


「来てんだろ? オマエの親父」


「えっ? お父さん?」


「少し顔出してく。 こっから近いんだろ? 行くぞ」



なんでいきなり私の親?
親に会う=娘さんをください、的な?

凄く嬉しいけど、さすがにそれはいきなりないない。

付き合うなりに挨拶なんて、それって普通なのかな?

グルグル頭を働かせようとするもそれがまとまらないまま、タクマさんは先にさっさと車を降りて、別荘の方向に歩き出していた。





****

色々不可解な疑念を持ちつつも、今朝はテラスの内側で、父は優雅に文庫本を読んでいた。



「お父さん、ただいま?」


「ああ、綾乃。 今朝は随分早くから」



そう言いかけ、私のすぐ後ろから横並びで歩いていたタクマさんに気付いた父が、驚いた表情をする。



「お久しぶりです」



タクマさんが挨拶をし、そのあとに父がいかにも懐かしげに目を細め、掛けていた眼鏡をカチャリと外して、丸テーブルの上に置いた。



「……拓真くんか。 すっかり男っぷりが上がったなあ。 ……そうか、私の言う通りだったろう?」


「……まあ」


「仕事は順調か?」


「特に問題なく」


「うんうん。 きみならそうだろう」



そんな二人のやり取りを、ぽかんと口を開けて眺めていた私。

見たところ、まるで久しぶりに会った、親しい知人同士のような雰囲気だ。



「あ、あの……お父さん…? タクマさんを知ってるの?」



キョドる私の様子を面白がるように、勿体ぶって『何だったかなあ?』みたいに考えるフリをするのは父のちょっとウザい癖である。

そんなのは、今どうでもいいですから。


タクマさんの方を見ると、なんだか先ほどから苦虫を噛み潰したような表情。


そしてそれとは真逆に、機嫌良さげに笑みを浮かべた父が次に口にした内容に、私は驚愕でひっくり返りそうになった。



「もちろん。 彼はお前の許嫁だからな」


「へっ!?」



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