第3章 ハチミツ味のSavage CAFE
「オマエみたいな味だな」
い、息苦しい。
近過ぎて。
さっきのトーストが口に付いてたんだろうか。 そんなことを思うと今度は恥ずかしくて居たたまれなくなった。
それでタクマさんから顔を逸らそうと思ったのだけど、指でつまんだ顎を上に向けられて、また唇を重ねてきた。
「んっ?…っ……!…っ」
男の人の、タクマさんのしっかりした造りの口から濡れた舌が伸び、私の唇を撫でてる。
何も考えられなくなって、私の体から力が抜ける。
粘膜の外側も内側にも触れられて。
飲み込むのも忘れてた、お互いの唾液が絡み合う音が頭に響いてきた。
「ん……ふ…っ…ン」
私も、触りたい。
タクマさんの真似をして、同じように舌を動かすとそれを包むように奥の方へ引き寄せる。
そしてまた押し戻しされて深く、口付ける。
痺れるようで溶けそうな、まるで脳を支配されている感覚。
「ふっ……綾乃の、女のカオ初めて見た。 気ぃ済んだか」
どれだけ時が経ったのか。
車窓の外からの蝉の声がまた耳に入ってきて、薄っすらと目を開けると、タクマさんが私から体を離して見詰めていた。
「……さっきは、『また来年も』なんてオマエが言ったから。 昨日言ったとおり、オレは夏以外でも会うつもり。 来週でもその次でも。 聞いてんのか?」
「………ハイ」
私の方は、消え入りそうな返事をするだけで精いっぱい。
キスってあんなに気持ちいいものなんだと、私は初めて知った。
一方で、どこか浮かない表情を浮かべたタクマさんがハンドルに肘をかけ、明後日の方向に呟いた。
「とはいえ、癪なんだよな。 なんとなく」