第3章 ハチミツ味のSavage CAFE
「タクマさん、私お友達に誤解されるようなこと言ったかな?」
「言った、けど。 ヤツとは長年の付き合いだから、今さら気にしなくていい」
「そうなの?」
タクマさんとタケさんは、高校時代の同級生だという。
パッと見は雰囲気も性格も全然違うっぽいけど、人懐っこそうなタケさんがなんだかんだとタクマさんを構いたがり、昔から二人はそんな間柄だったのかもしれない。
これから段々知っていく、私の知らない彼。
そんなことを想像すると、ついニマニマしてしまう。
「大体、オマエのド天然は慣れてるし……おい、オマエん家ってここ真っすぐで良かったか」
公道の海岸沿いを走り、右折したのちにタクマさんが訊いてきた。
道は確かに、合ってるんだけど。
「……忘れた」
「ハ? 冗談……」
俯いてる私の方をチラリと見て、車の速度を落とし、トロトロと路肩につけてタクマさんが車を停めた。
「チビ、何拗ねてんだ?」
「だってまだ、お昼前だし」
彼とのせっかくの、初めてのお出掛け。
さっきまでのうきうきした気分が嘘のように、しぼんでしまう。
いうなれば、ジェットコースターの降り場に向かってるところみたいに。
「……今朝家出たの、早かったんだろ? スマホも忘れてるし、親が心配するだろうが」
「でも……」
そんなこと、忘れてた。
でも明日私、帰っちゃうし。
もっと一緒に居たいなんて、こんなの、ワガママなのかなあ?
言い淀んでると、タクマさんが無言で手を伸ばし、私の片方の頬っぺたを指で軽い力でむにっ、とつまんだ。
「ふぃ…?」
「付き合っても、大事にはするけど、オレは甘やかす気はねぇぞ。 言いたいことあんならハッキリ言え」
「れ、れも、はクあさんも言わひゃいほ?」
「ぷっ……なにをだよ」
自分でつまんできたくせに。
タクマさんの、少しだけ柔らかく下がった目じりにドキドキしながら、触れられていた自分の頬っぺたをすりすりとさする。