第3章 ハチミツ味のSavage CAFE
お店で楽しくお喋りしながら過ごしているうちに、本格的に降りそうだった雨が小降りになってきたようだった。
それと同時に、外にサーフボードを立てかけて今から波乗りを楽しもうというお客さんがパラパラとお店の中に入ってきて、私たちはおいとますることにした。
「忙しくなってきて悪いね。 綾乃ちゃん明日まで居るの? また遊びに来てよ」
「はい!」
「稼ぎ時だろ、頑張れよ」
ドア口までタケさんが見送ってくれ、雲間から少しずつ明かりが漏れ始めている空を見上げた。
早朝の雨のせいで、今日は蒸し暑くなりそうだ。
「ふーっ。 ごちそうさまでした。 おなかいっぱい!! いいお店だね。 また来年もここ来たい!」
「……満足そうでなにより。 っても、あんなバターまみれの厚切りのパン、朝からよく食えるよな」
朝食はしっかりと取るように、というのは家の方針である。
私が食べたのはナッツたっぷりのバターはちみつトースト。 叶うなら、胃がもう一個あればと思うほど美味しかった。
それから車に乗り込んだはいいが。
帰りの車内では、どことなく不機嫌になってしまったタクマさんだった。
タクマさんの乗っているSUV車というものは、普通車にしては大きく乗り心地の良いものだ。
無骨そうに見えても、品や知性がないというにはそぐわない、そんな彼にピッタリだと思う。
そういう彼が不機嫌になったということは、私はなにかさっき結構なことをしてしまったのだろうか。