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朝凪のくちづけ【R18】

第3章 ハチミツ味のSavage CAFE




「綾乃。 とりあえず戻ってきて座れ。 ホラメニュー」


「は、……はい」



顔の熱さがなかなか引かない。

おそらくゆでだこみたいになっていると思われる私に、店主さんがぷぷっと笑みを洩らした。



「オレ拓真の元同級生ね。 竹下タカシって間抜けな響きだからタケでいいよ。 ここのオーナーやってんの、よろしく。 えっと」


「森本 綾乃です。 あの、私以前、ここに来たことがあるような気がするんですが?」



先ほどから感じている既視感に、首を斜めに傾けながら尋ねると、代わりにタクマさんが返事を請け負った。



「ああ。 オマエ記憶力だけはいいよな。 五、六年っぐらい前か。 こんな風にメシ食いに連れてきた」


「五……? いや、うわ。 ちょっと待って、あの時のチビっ子!?」



ああ、やっぱり。
うろ覚えだけどもそんな気がしたんだよね。

タケさんも忘れてたようで、自分の腰位の高さに手をかざし、当時の私の様子を示してきた。
ちびっ子と言われるのも無理はなく、あれは私が中学校に入ったばかりの頃だったから。

正しくは、七年前だよ。 タクマさん。


拓真くーん。 ちょっとコレは犯罪じゃないの? そんな風に茶化してくるタケさんを無視して、タクマさんはコーヒーカップに口をつけている。

タケさんがカウンターの向こうから楽し気に私の方に向き直ってきた。



「で、なに? 今日はこんな朝早くから。 綾乃ちゃん、どう? この不愛想と付き合ってみて」


「えっあ。 今朝はあったかくて硬くて長かったなあと思いました」



「ブッ」



コーヒーを吹き出しそうになっているタクマさんに、タケさんが半分引き気味に視線を移す。



「うわあ……こんな子相手に朝っぱらから?」



朝っぱらからって言われても。



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