第3章 ハチミツ味のSavage CAFE
いかにも海沿いで経営しているカフェらしく、そのお店の入口のすぐ傍には、広いオープンデッキがしつらえてあった。
こういってはなんだけど、この町のお店にしてはかなりオシャレだと思う。
潮風に吹かれて、波音を聴きながらランチなんかすると楽しそう。
店主さんらしき男性とタクマさんが親しげに挨拶を交わし、雨のために店内に通された私たちだったが、なんだろう。 どこか見覚えがある。
長身で細面のイケメンマスターといい、ダークブラウンで統一されたログ風の内装といい。
「女連れって珍し。 もしかして昨日海にいた子? 親戚の姪っ子とか?」
あ、この声は、あのときタクマさんと車に乗ってた男の人だ。
とりあえず、それは分かった。
「いや彼女」
タクマさんが卵とコーヒーでいいや、とオーダーする合間にしれっと言う。
「!!!?」
「え、わかっ! いくつなの彼女」
『彼女』
《goo国語辞典より》
彼女…愛人、恋人である女性。「―ができた」⇔彼/彼氏。
もちろん私はこれも調べ済みだ。
でも、だけど、まさかこのタクマさんが、こうもアッサリ言ってくれるとは思ってなかった。
なんというか、出合いがしらにカウンター受けたみたいな。
ダメ。 めまいと動悸が止まらない。
ついでに私の足に力が入らない。
「アレ……どしたのこの子。 カウンターに崩れ落ちて一点見詰めたままプルプルしてるけど」
「こいつ時々、世界線超えるクセあるだけだから気にすんな」
そっか、勿体ないねえ。 かわいいのに。
などという声が彼方から聴こえてきた。