第2章 昨日までとは違う海
「……ったく……今朝は雨って予報で見たからな。 連絡しても既読ねえし、まさかと思って来てみれば……案の定いるのかよ」
「雨……」
そういえば。 目を上げると丁度、ポツリと落ちてきた水粒が私の腕を濡らした。
暗い色の雲から遠慮がちに明けかけた今朝の空からは、朝陽は拝めそうもなかった。
雨の日は、いつもタクマさんはここへは来ない。
と、いうことは。
「2.の方だよね!?」
両想いに変わったから、だからタクマさんは私に会いに来てくれたのだとの結論に私は至った。
「は、2?……とにかくオマエは三回に一回ぐらい、人の話聞け。 スマホは」
「はい! あ、忘れてきた……かな?」
タクマさんの、真顔で無理やり作ったみたいな笑顔がちょっと怖かった。
それが逆に、いかにも現実っぽくて私の口角がついつい上がってしまう。
そんな私を不審げに横目で見て、彼が海岸と反対方向に踵を返した。
「……いい。 雨足が強くなってきたし、行くぞ」
「え、どこに?」
「とりあえず、朝メシとか。 オマエ明日東京帰んだろ? 車そこに置いてっから」
「っ!! ホント?」
なかばスキップでもしそうに浮かれた足取りで、タクマさんの後に続く。
うれしさの勢いで、つい彼の腕を取ってしまったけど、振り払われる様子はなかった。
そのまま話し続ける私にタクマさんが相槌を打ち、私たちは浜辺を歩く。
「でも、昨日返信してくれればよかったのに」
彼の腕ってあったかくて長くて硬いんだ。