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朝凪のくちづけ【R18】

第2章 昨日までとは違う海



冷たく少し湿った砂地。

それにも関さず仰向けに寝転んで、目をふせる。

夜の波の音は、朝のそれとは違う。
ざわざわと、不穏に揺れては忍び寄る。


こんなちっぽけな私の不安なんて、真っ黒な海にまみれて飛び散ってしまえばいいのに。
バラバラになって、ゆくあてもなく海面をさまよって。

波打ち際を歩くタクマさんに、しぶきと一緒に、ひとつの欠片でも届けばやっと私は安らかに眠れるんだろう。




「────────乃」



ザザン……──ザザ─────…



「………ボケ乃」



ボケじゃないもん。



「!!……いだあっ!?」


突然、おでこに激痛が走って、痛みの反動で自分の体が二、三回砂浜にゴロゴロ転がった。



「……若い女が地べたで安らかに寝てんな。 アホだろオマエ」


なになに今私、デコピンされたの?


「な、なんで?……親にもぶたれたことないのに」


涙目で、ズキズキと痛むおでこを抑えながら身を起こす。

薄灰色の海を背景に、いつの間にかタクマさんが目の前でしゃがんで、心底呆れたように私を見ていた。



「言わなきゃ分かんねえのか?」


「え……私に会いたかったからって?」


「…………」



そんな、ゴミでも見るような目でこっちみなくても。


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