第2章 昨日までとは違う海
****
────なんてさ、妄想するのは個人の自由だからね……
「……いるわけないし、せっかく連絡先交換したのに、結局タクマさん、お返事くれなかったし」
午前三時過ぎ。
眼前の、黒と灰色がとどろくだけの鬱屈とした景色を眺め、薄手のシャツを羽織った自分の体を両腕で抱き締める。
「普通、こういうのってもっと幸せな気分じゃないのかなあ……」
思わずため息をついた。
寝ちゃったら、昨日のことは実は夢だったのです。なんてオチが怖くて、結局一睡も出来なかった。
恋愛って、まともに手を出すと、どうやらジェットコースターみたいに落差が激しいらしい。
あの時のことをなんども思い出そうとしては自分の唇に触れる。
キスしてくれたってことは、『そう』なんだよね?
そして昨晩『両想い』の意味を改めて調べたりして、するとなぜだろう。
私はますます不安になった。
《goo国語辞典より》
両想い……お互いに思いが通じ合っていること。相思相愛。
→私の方がずっと好きなんだから、実はこれは当てはまらないのでは?
付き合う……1.行き来したりして、その人と親しい関係をつくる。交際する。「隣近所と親しく―・う」
2.恋人として交際する。「今―・っている彼女」
→両想いでないとすれば、私たちの関係は1. の方なのでは?
「……そんなの、今までと変わんないってことだもの」