第10章 終章 わたしの心の青海原
「ムーンロード……ね。 なあ、オマエみたいのって、結婚式とかベタなモンに憧れるワケ?」
バージンロードみたいな言葉でも思い付いたんだろうか。
元々あんまり派手なことは好きではないので私はちょっと眉を下げて首を横に傾けた。
「んー……うちはお父さんとお母さんが、結婚30年記念にもう一度したいって言ってるよ。 あ! そしたら、みんなで一緒にする!?」
その方が、目立たないし。
ポロッとその場のノリで言ってしまったけど、よくよく考えたら、私、先走りすぎ。
なんとなく恥ずかしくなって俯きながら黙って彼のあとをついていく。
「は。 横並びに母娘合わせて四人とか諸々とツッコミどころが満載だな。 そのことについては、あとからゆっくり話すとして、だ」
意外なことにタクマさんが普通に笑っている。
「……もしもそうなったら、多分。 こっちの歳考えるとオマエがノンビリ教員なって、実績作ってる時間は余りねぇんだよなあ」
『もしもそうなったら』
それは、イコール、そうなる可能性があるということですか!?
「とはいえ……オレはオマエのやりたい」
「分かったよ! じゃ私、東京帰ったら塾のアルバイトから探してみるね! この辺り、学習塾は結構あるもんね」
それなら準備しておくのに越したことはない。
タクマさんの杞憂を取り除くべく、私は彼の言葉に被せて即答した。