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朝凪のくちづけ【R18】

第2章 昨日までとは違う海




「タクマさーんっ!!」


いつもの場所、いつもよりも、少し早めの時間。

やっと陽が昇ってきたピンク色の空の下、彼が私に向かって微笑んでいる。
タクマさんのちょっと抑えた、見惚れるような笑顔を朝から眺められるなんて、三回に一回あるかないかの幸運だ。



「よ。 綾乃」


「お、おはよ! なんでタクマさん、こんな早い時間に来てるの?」


まさかタクマさんがもういるとは思わなかった。
私の方は今朝は早くに目が覚め、ソワソワしどおしで、ついつい足がここに向いたんだけど。

駆け寄った私に片膝を立てて座った見上げた彼が、ふいと顔を逸らす。



「……言わなきゃ分かんねぇか?」

「え、なにを?」

「オマエに会いたいからって」


「………っ!!」



タクマさんってば……!

きゅんきゅん胸が締め付けられるのが苦しすぎて、私が両手で自分の衣服の衿元をぎゅっと押さえる。

なに突っ立ってんの? 隣来いよ。そんな風に促されるまま、座った私の肩に手が伸びて、大きな手のひらが私を引き寄せた。


また今日が始まろうとしている。

もうじき、いくつもの光の帯が寄り添っている私たちを包んでく。


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