第10章 終章 わたしの心の青海原
強引に奪われる感じの、これはなにより私の体が覚えてる。
優しいキスもなく、私の反応を伺うための瞳もなく、躊躇いがちに待つ指もなく。
いつも私を緩く包む彼の腕は今は息苦しく私を拘束する。
自分の体を守っていた彼のために選んだワンピース。
唇のグロスと一緒に塗り潰されて、床にくしゃりと落とされたそれが抜け殻みたいなただの布切れになる。
噛まれてきつく吸われる感覚が肌を刺す。
強く押し付けられた舌は彼の情念に任せて這い回る。
でも、私は思う。
今は『欲しがり』の彼。
凪ぐように穏やかだったり、うねっては打ち寄せる高波のように荒々しかったり、タクマさんはやっぱり海のよう。
そんな彼を受け入れる覚悟についてどうこうというのは、私にとっては無意味なこと。
私が怖がって途中で逃げ出すとでも思ってるんだろうか。
私の手首をシーツに縫い付けている彼に、そんなことはする必要もないと言いたかった。
ショーツを中途半端に腿にかけたまま明るい室内で私の足を開いた彼が、私を見詰める。
そんな彼の熱を帯びた眼差しは耐え難くっても私はそれを抗えない。
「あっ……!」
膝を割られた両脚に顔を下げたタクマさんが近付き、息がかかった気配がした。
なにか反応をする間もなく柔らかい舌のようなものが私の割れ目を舐め上げる。