第10章 終章 わたしの心の青海原
隅には立派なアイルランドキッチンのようなものもあり、向こうはバスルームだろうか。 確かにこの部屋だけで充分に生活が出来そうだと思う。
黒とダークブラウンが基調のこの家の重厚な雰囲気に、異国風の家具や落ち着いたグリーンのファブリック。
元々の古い良いものに新しいものを加え安っぽくもないし古臭くもない。
どことなく、タケさんのお店と似ている。
「冷蔵庫とかホラ、そこにあるから。 喉とか乾いてたら適当に好きなモン飲めよ。 コーヒーとか紅茶がいいなら淹れるけど」
キッチンを目で指してきたので、シンクとカウンターが長続きの奥の方にある冷蔵庫から「オレ水飲む」と言うタクマさんにペットボトルのミネラルウォーターと、自分にはお茶を選んた。
ベッドの近くにはL字型のソファセットがあり、窓まで大きくなんとも解放的……というか。
都内に住んでいる私としては、ものすごく贅沢な住まいだと思う。
……でもこんな所で、彼は10代からずっと一人で?
広い広い家。
この部屋以外は生活臭どころか人が居たという気配さえない。
こんなものは家というより、もう建物という方がしっくりくる。
タクマさんが私の実家や別荘が居心地がいいと言った意味が分かるような気がした。
「……オマエさあ。 そんな風に、オレに対して妙な同調圧力発揮すんの止めろよな。 割と明後日のこと多いし」
「え?」
ソファの後ろのベッドに腰をかけているタクマさんが何を言わんとしてるのかを図りかね、ソファの前に立っていた私はきょとんとして彼を見た。