第9章 One hundredth time「少し」
自分の肌をはじめてすべてさらけ出す相手が彼であること。
それが私にとってはどうしようもなく嬉しくて。
はあ、小さくため息を吐いて、タクマさんがそんな私のほころびで弛んだ私の頬に手のひらを当てる。
「……大切にしたいって、今はただそれだけ」
それからの彼はしばらくなにも話さなかった。
全て衣服を取り去ったあとの私にじっと見入り、ほんの小さく息をついただけだった。
もどかしく肌を滑る指先の束は触れて欲しいところにはなかなか来てくれない。
時おり落とされる口付けも唇を触れさすだけのもの。
ただ、タクマさんの黒く濡れたみたいな瞳だけはずっと私から目を逸らさない。
温まってく自分の吐息を自覚しながらも彼の動きの合間にたまに、その視線に耐えられずに目を伏せた。
つん。 と、胸の先を押され「あっ」と声が出る。
そしてもう片方も。
ゆるゆると指先の何本かでくすぐるみたいに弄び、離れて、ほっとして息をつく。
そのすぐあとにまた同じようにされて、私はまた息を呑んでは吐くを繰り返した。
灯された快感とともに。
私の背中とシーツの隙間が開いては狭まり、今度は緩く先を摘まれた両胸に、長く、媚びたような喘ぎを洩らした。