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朝凪のくちづけ【R18】

第9章 One hundredth time「少し」



ベッドの上に下ろされ、着替えていたTシャツを脱いだタクマさんに見蕩れる間もなく、彼が私の脇に手をついた。

肩に回された腕が私をベッドにゆっくりと横たえる。
私を見詰めるタクマさんの瞳はとても穏やかで、それが私の強張りをほぐさせた。


明かりのついたダイニングの奥。

私の薄暗い部屋の壁に重なった黒いシルエットが浮かび上がる。


「大好きだよ」


思わず涙ぐんでそう言い押し黙った私に、彼が薄く笑いを洩らした。


「なにげに、圧を感じんだけど……」


「オレも好きだって」そう笑いながら口付けてきて、つられて私も可笑しくなった。

でも、彼は今本当はどう思ってるんだろう。


「今……なに考えてるの? もしかしてまた……私の子供の頃のこと、思い出してたりする?」


軽く唇を合わせながら言うと「……いや」と、私の肩からするりと衣服をはだけさせた。


「そんなの考えんのは、余裕があるときだな」


タクマさんが私の胸元に付けたいくつかの紅い花の跡。

つつとそれを指でなぞり、詫びるように舌でなぐさめる。
それを合図にカチッ、と耳に聞こえないスイッチを入れられたようだった。

私の体を淫らに変えるそれはタクマさんだけが持っている。



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