第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?
「まあ……そうだな。 オマエの言って欲しいことを聞くかな。 止めて欲しいんなら止めるし、別れたいんなら仕様がない。 だから言え。 これでも不満か」
「……分かったよ。 じゃ、止めて欲しい」
それで離れずに済むのなら、私はそうする。
タクマさんを失うのがなにより耐えられないから。
私の背中に指先が当たり、なだめるみたいに撫でてくれる。
「……オマエでもヤキモチ焼くんだな。 かなり面倒くせぇけど、まあ、そんなに嫌じゃねえ……かな」
ヤキモチ。
なんとなく、自分でもそうかなと思ったけど。
今までそんな感情を持ったことがなかった。
すごく嫌なものだと思う。
でも、タクマさんの口調はいつも通りにまた戻って並んで肩を抱いて私に優しく触れてくる。
「私はやだ。 チクチクするし」
「オレがあそことかで紗栄子と会うのは嫌か?」
それが嫌とは少しだけ違う。
あのお店はタクマさんの友だちも含めて、大切な場所なのだろうから。
「ううん。 私、あの人好きだよ。 きっと、私の問題なの」
私も好きになれそうな素敵な人だったから私はヤキモチを焼いたんだ。
「そうか」
「八つ当たりみたいにして、ごめんなさい」
「そんなに嫌じゃねえって。 レア綾乃見れたし」
軽く笑いながらほっぺたにキスをされ、顔が熱くなった。
目線を下に下げたままの私からタクマさんが視線を外ししばらく私たちは無言でいた。