• テキストサイズ

朝凪のくちづけ【R18】

第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?



明らかに気分を害した様子だったけど、タクマさんはそれを打ち消すように小さく息を吐いた。


「らしくねえな。……好きにすりゃいい」


「そ、そうなんだ?」


らしくない。
それはきっとその通りで。

なんでこんなことを言っているのか自分でもよく分からなかった。

言えば言うほど、心が悲しくなりそうなのは分かり切ってるのに。


「あと、勝手に好きだ好きだ言っといて、消えるつもりならもう言うな」


「言うよ。 だって大好きだもの」


「……ワケ分かんね」


特に声を荒らげることもなく、冷たく私を突き放すタクマさんはまるで付き合う前の彼のよう。

なにも変わってなかったんだろうか?

気の無い様子で紗栄子さんのことを話すタクマさんにとって、私も結局同じになってしまうんだろうか?

まるで瞬きのうちに消えた線香花火みたいに、彼と過ごした時がただの錯覚だったのだと、そう考えるとたまらなくなった。



「た、タクマさんがいつも言ってくれないのはそのせい? 消えちゃうから? 居なくなるから?」


「まだ続けんのか? この話」


自分の足元を見詰めたまま、喉の奥に込み上げてくるのはどうしようもない寂しさ。
それから怖さ。

黙り込んでしまった私の後ろで彼が身を起こした気配がした。



/ 159ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp