第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?
遊ぶかのようにぶつかっては弾けて、ボッポッ、ポポッ、と不規則に現れて消える。
中央の塊が段々と大きく大きくなり。
辺りを照らし。
見守っている私の前で……。
ボトッと落ちて……終了した。
「ぷっ……泣くなよ。 今は禁止なっちまったけど、学生ん時は浜でよくやったな」
タクマさんが燃えさしをバケツに入れ、自分にはロックグラスに入れた金色の液体を傾け少しだけ口に運ぶ。
「……泣かないけど。 紗栄子さんって、あの人。 昔お付き合いしてたり……?」
「は? あー。 タケか……口軽いな」
彼の言葉の端々に、頭に浮かんでしまうあの人のことをなるべくさりげない調子で訊いてみた。
「ううん。 女の勘てやつ」
「オマエにそんなモンが備わってんのか」
「タクマさんには。 大好きだから」
少し後ろに倒した上半身を両手で支え、いつもよりも声のトーンを落とす。
基本的に彼は、あまりこの類いのことは話したがらないとは分かっていた。
「……ああ。 確かに……けどもう、大昔の話過ぎて。 アイツもとっくに結婚してるし」
「良い人だね? すごく綺麗だし。 なんで別れたの?」
話したがらないのは分かっていたけど、聞かずにはいられなかった。
胸のチクチクがそうしろと急かしてるみたいで。
「オマエって、んなこと聞きたがんのな。 何だっけなあ。 たしか田舎は嫌だって、他んとこの奴にプロポーズされて隣の市に行っちまって、そんだけ。 何年かしてまた連れんなったけど、そういう感情はもうねえな……向こうもああいう性格だし」
「……止めなかったの?」
「んなもんはアイツが決めることだろ」
「私のことは、止めてくれる?」
「……なにが言いたい」