第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?
今は午後八時。
波の音が少し冷たい夜風を運んでくる。
駐車場に向かうタクマさんに訊いてみた。
「みんな元高校の同級生なの?」
「オレの連れのヤツらか? タケの彼女は違うな。 つっても、二人ももう付き合って六年だから似たようなもんか」
きっとタケさんの彼女もキレイなんだろうなあ。
美男美女が四人揃うなんて、迫力っぽい。
私なんかその中に混ざると浮いちゃうんだろうな。
あ、また変な感じ。
これも母が言ってた『不安定』の仲間なんだろうか。
そんな感情を振り払うように、エンジンをかけたタクマさんの車に勢いよく乗り込む。
「タクマさん! 私、花火買ってきたんだよ」
「へえ。 んなもん何年もやってねえな」
「だと思って」
本当は、浴衣とかを着て一緒に夏祭りにでも行きたかったんだけど。
それは来年でも行けるもの。
それでも、過ぎていく夏に少しでもそれらしいことを彼としたかった。