第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?
「外で虫の声が聴きたいな。 今晩は涼しそうだし静かなところで」
せっかくのこちらでの夜を、タクマさんとまた久しぶりに過ごせると思うと。
妙に彼に慣れないとか胸のチクチクとかは、私は今はとりあえず隅っこに追いやることにした。
「虫? 鈴虫とかか? また妙なことしたがんのな……そういや、オレん家来たいって前にオマエ言ってたか。 でもあそこはボロいから、夕涼みすんなら縁側になるな。 今晩はお前んとこ行くか」
「ボロいの?」
「建て直しするのもなんかまだ、イメージ湧かねえから。 ただの田舎の平屋。 殆どの部屋、使ってねえなあ。 月に一度っぐらいパートの人に掃除してもらってるけど」
「ふうん。 でも私、絶対そういうとこ好きだよ。 おばあちゃん家みたいな」
「ああ、そんな感じ。ただ風呂は去年リフォームしたから広い。 一緒に入るか」
「………」
「ふっ、冗談。 固まんな。 ま、どっちでもいいように帰りに少し買い物してきた。 ここ出て二次会しようぜ」
「うんっ!」
ロフトで色々と話したりしているいるうちに、フロアにはちらほらとお客さんが来ていたみたいだった。
カジュアルな服装や雰囲気的にやはり地元の人たちっぽい。
「拓真もう帰んの」お会計でそう訊いてきたタケさんに、「どうせ飲めねえしな。 コイツもいるし」と目で私の方を指してきた。
「ごゆっくり。 綾乃ちゃんも、また会ったらよろしくね」
タケさんと紗栄子さんにはお世話になったと思うので、戸口でお辞儀をした。
「はい! ご馳走でした。 色々ありがとうございます」