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朝凪のくちづけ【R18】

第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?




「綾乃ちゃん、拓真の彼女だよね。 タケから話聞いてるよ。 昔からの腐れ縁でタケと拓真とは今もたまにつるんでるけど、私、既婚者だから。 心配ナシでね」



そう言ってヒラヒラと薬指に結婚指輪をつけた左手を振る。



「でもなあ、わざわざ隣の市から一時間かけて、人妻が一人で飲み屋に来るって良くないと思うぜ」


「ちょっとした気晴らし。 仕事でやな事あったらここに来たくなる。 アタシが過ごした海だもん。 夜の海で鳴る十時の汽笛聴いて、そしたら元気になれるから。 ってことで、付き合ってよタケ」


「ええ、また俺運転手役? 俺、綾乃ちゃんと話したいんだけどなあ」


「……朝の六時にも汽笛なりますよね」


「ん? よく知ってるね。 そう。……でも、もうアタシはあれを聴くことないな。 たまの連休ならダンナも許してくれるけどさ。 さすがにしょっちゅう朝帰りは、ね」



……雰囲気とか、似てる、少し。

タクマさんがこないだ飲んでたお水と同じ、彼女の前にあるのはクリスタルガイザー。

硬水の中でも飲みづらいこれをわざわざ好む人はあんまり居ないと思う。


『あんま長続きしたことねぇな』


なんて、タクマさんの嘘つき。

だってたまに首元に手をやる癖までおんなじ。

昔、タクマさんと浜辺で朝の汽笛を聴いてたんだろうか。 そんなことまで想像してしまう。


うう。 胸がチクチクするなあ。



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