第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?
「だってあんなの面倒でしょ? どうせ最初はサーファー目当てでも来たんでしょうに。 ヘラヘラ愛想良くして勘違いさせるアンタも悪いわ。 ああいうの、イチイチ相手にしてたらキリがない……って、座敷わらしちゃん、でなくて。 綾乃ちゃん? もそう思わない?」
私?
私のことを知ってるんだろうか。
身の安全を確認できたので普通の高さに座り直す。
紗栄子さんはそんな私に好意的な視線を私に向けていた。
でも、どうなんだろう。
タクマさんも『煮え切らない』なんてタケさんのことを言ってたっけ。
「うーん……たしかに、タケさんに結婚の約束があるなら、お互い、時間の無駄なんですかね。 思うのは自由な気もしますけど」
「結婚はウソだけどね。 タケたちはそういうのにはこだわんないから。 それでも自由だろうが、親友の彼氏に付きまとわれるなんて、アタシが嫌なのよ」
気の利いた言葉が見つからず、詰まらない返答をした私にそう彼女が言う。
なんだか私、さっきから妙な気分だ。
紗栄子さん。
薄いブルーのブラウスはシルクだろうか。
白の細身のパンツに、なぜかスニーカー。
ハッキリした物言い。
ショートボブに少し厚めの唇が色っぽかったり。
スタイルもいい人だけど、どういうわけだかあまり見たくないような。