第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?
「……んーと、上手くいってんじゃないかな?」
「えー……こないだチラ見したけど、ナツの方が絶対可愛いのに」
「イズミ、そんなこと言うの止めてよ……」
「んん、でも、告ってフラれたんなら、仕方ないし。 ナツちゃんにはもっといい男いると思うよ」
俯いているナツさんという女性の前に、カクテルらしき液体の入った赤いロンググラスが置かれる。
「タケ。女心はそう割り切れないモンだよ。 そんなことも分かんないなんて、付き合ってる女が悪いよ」
なんだかドラマみたいだなあ。
いっそ感じ入って、私はその光景を眺めていた。
この状況を、頭の中で整理をしてみる。
つまりタクマさんのことを好きなのは、実はこのナツさんという人。
なんだか告白をして以前に断られたらしい。
そしてそんなナツさんを応援するイズミさんは実はとても友だち想い。
色々と、私の認識に齟齬があったらしい。
私も前に実感したけど、ちょっとした印象でその人を決め付けるのは良くないことだ。
反省しよう。
そう思ってたら、その時ぷっ。 と吹き出したのは先ほど一人で来た女性だった。
「拓真がずいぶん前に愚痴ってたね。 断っても断っても寄ってくる子がいるって。 その子? まだやってんだ」
「……紗栄子、頼むよ……」