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朝凪のくちづけ【R18】

第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?



と、そうしていたらまた一人、女性がお店に入ってきた。

今度はすれ違ったら同性でも振り返りそうな綺麗な人だと思った。

何も言わずに、ストンとカウンターの隅に座ったその人にタケさんが気の置けない様子で声をかけた。



「仕事早く終わった? で、また夜遊びか」


「週末の夜ぐらい、息抜きさせなさいよ」



この声は聞いたことがある。

あの時はお酒を飲んでいたのか、もう少しテンションが高くて『バイバイ、タクマ!』 そう言っていた。


タクマさんたちのお仲間だろうか。

その彼女の前に、何も言わないのにタケさんからカウンターの上に置かれたペットボトルのミネラルウォーター。

二人連れの方の歳は二十歳ぐらいだろうか。
女性の方はタケさんやタクマさんと同じくらいだと思う。

そんなタケさんになんだか焦れた様子でイズミさんが声をかけた。



「ねー、タケ。 最近話聞かないけど、タクマって彼女と別れたの?」



タケさんがやや困ったような表情をして、カウンター下の冷蔵庫を開ける際に私の方をチラと見た。

そりゃ、そうだよね。

でも別に、私とタクマさんのことを彼が話したって悪いことじゃない。
それからタケさんは今お仕事中だ。

私のことは気にしなくていいですよ。 そう言う代わりににこっと口角をあげた。



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