第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?
そこで初めて父は背もたれに体を預け、私も冷めたお茶に口をつけた。
「あれからしばらくは彼と会えなくなったが。まだ若い彼と同じように、私は私の持つこの手で、お前たちを守っていくべきなのだと教えられた気がした。 それが私の意思だと。 何と比べるまでもなく、余分な見返りや重責を感じるまでもなく」
父の目尻に浮かんだ皺が深くなる。
「そして、今はとても幸福だ。 互いの気持ちがあるのならば、彼はこれからもお前をちゃんと守ってくれるだろう。 私は彼に本当に幸せになって欲しい」
しばらくと私は父と向かい合いながら、タクマさんと父の過去に思いを馳せた。