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朝凪のくちづけ【R18】

第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?




病気の父上のことを聞いても、こう言ってはなんだが、もう間もなく亡くなる人間だ。
拓真くんの人生はこの先も長い。

彼が何に対して義理立てしているのかが、私には分からなかった。


だけど彼は言ったんだよ。



そう呟き、当時の事を思い出すように注意深く父が目を閉じた。



『運は実力ではなく限られた選択肢に過ぎない。 だがどれを選んでも、自分の意思は自由の名の元にある。 オレが最期まで親父の面倒を見ることを決めた』

親の望みに反して、その遺産で自分の好きなことは出来るが、そんなものを与えられるのは自分が嫌なのだと。

『そう選んだ、自分の自由だけはオレのものだ』


お前のことも何だかんだで可愛がってたから元々、彼は弱い者を放っておけない、そういう性分なんだろう。


だが、本当に自由な人間ならば、本来、それを口にする必要なんてないんだよ。

そんな彼の、たまにしか見せない稚拙さに気付いてはいても、私には何も言えなくってね。




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