第8章 丁度良い焼き加減だったらどんな味?
「少し体調崩してたんだよね? 見かけによらず拓真って心配性だから、ウザかったんだよねえ」
「拓真さん、普段からよくお店に行くんですか?」
「こんなトコだから、テキトーに飲める店も少なくってね。 あ、最近は秋から出す店のメニューとかの話しててさ。 奴、昔からオレより料理ウマいから。 知ってる?」
はい、少し複雑ですけど。 何ともいえない表情でそう言うと、「だよねーでも、アレいい嫁になるよ、オススメ」なんてまた明るい返事をしてくる。
……あ、潮の香り。
そう思うと共に、窓からは夏と秋の間の、夕方の海の景色が飛び込んできた。
この時期にここに来たのは何年ぶりだろう。 と改めて思った。
光の帯を境に水平線を遠くのぞんで、空と同じに褪せた海の色が広がる。
じっと窓の外を眺めていると、タケさんが独り言みたいに話してくる。
「ここって周りにもいくつか大きい浜あるでしょ。 だから観光にも半端でさ。 でも、入り江の静けさとか、もうなんにもなさすぎて、逆にそれが好きなんだよね」
いつもタクマさんが歩いている浜辺だ。
私も、そう思います。 車窓から目を離さず私も頷いた。