乙女のしとやかさ【宇髄天元】【鬼滅の刃】R18♡あり
第1章 1 新しい朝
私の家と天元様の家は親戚だったし、
天元様は当時宇髄家の次期当主を期待されていたから、
彼のことは私の耳にも入ってきていた。
私が天元様と初めて会ったのは、
私が8歳で、天元様は12歳の時だった。
宇髄家の親戚での食事の席でのことだった。
忍びの里の中でも地位が高く、
厳しいお父様と訓練で里の中でも一目置かれていた宇髄家
の人達と食事をすることに、私は酷く緊張していた。
でも、
その緊張を解いてくれたのが天元様だった。
「おい、おい!大丈夫か??」
「えっ??あっ、、、」
あまりの緊張でどうやら私はフリーズしてしまってたらしい。
声をかけてくれた人に顔を向けると、
当時8歳だった私でもドキッとするほど
綺麗な美少年の顔があった。
あまりの緊張と、名前も知らない美少年に
声をかけられた事への動揺で私は何も答えられずにいた。
「ん?? お前大丈夫か??
緊張してんのか??」
私は何も答えられないまま、
恥ずかしくてずっと下を向いていた。
すると、その人は続けて、
ひとりでに話し始めた。
「まぁ、緊張すんのも無理はねぇよな。
あんなおっかなくて、堅苦しい親父のいる
一族に囲まれてちゃ飯も食えたもんじゃねぇよな」
そう言い終えて、
その人は私の頭を優しくなでた。
大きくて、温かくて優しい手だった。
ふと、顔をもたげてその人の顔を見ると
優しく微笑んでいて、、、
けれども、綺麗な深い朱色の目の奥が、
なんだか酷く悲しそうだった。
「天元、茶を持ってきなさい。」
「はい、父上」
(じゃあな)
と私の耳元で小さく言うと、その人は行ってしまった。
そうか、あの人は"天元"って名前なんだ。
天元お兄ちゃん。
私の憧れの人で、初恋の人。
あれから色々あって、
私は天元様に嫁ぐことになった。
忍びの里でも地位が高いという世間体よりも、
初恋の天元様の嫁になれたことがこの上なく
嬉しかった。
たとえ、くノ一としての任務で命を落としたとしても
悔いはないと思った。