第6章 #6 移り変わる心境
青い空に羽ばたく鳥を眺めながら花霞は頬杖をつく
手で支えられた頭がこくりこくりと上下していつの間にか眠りへと誘われていた
「やっと………役に立つのね…」
目の前の人影視界の端に映る緑
懐かしいそよ風が吹いてくる
「絶対に山から出ちゃダメよ」
懐かしい声色
あぁ、誰だったか
2つの影はまだ 消えぬ
ハッと意識が現実へ戻される
数秒か、数分か分からないがなんとも懐かしい夢を見た
目の前にいた2つの影が何かは上手く思い出せない
深い深い霧が花霞の思考を覆い隠して真実を見せない
ただただ、懐かしい
体が動けたのなら縋りつきたくなるような切ない、胸がぎゅっと締め付けられるような、そんな懐かしさ
花霞はそれをまだ分からない
ただ緑を眺め唖然としていた
彼女が自分の運命【さだめ】を知るのはもっと先のお話。