第5章 #5 受け継がれるもの
この不死身というのは非常に厄介であり、辛いものであった。
自死しようとしても不死なので死ねない
殺されることもない
死ぬためには自分の子供にこの力を受け継ぐ必要がある。
綾芽家に産まれただけでこのような運命を背負わされる。
そして花霞もその運命に苦しんでいた
目の前で大切な人が亡くなる苦しみは花霞の小さな体では抑えきれなかった
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何やら上で大きな音がしたが大丈夫だろうか…
もしかしたら寝返りでベッドから落ちた?
そんな事を考えながら悶々としていると
ゆっくりと五条さんが階段を下ってくる
「どうしました?大きな音がしましたが…」
「いや、魘(うな)されてただけだ」
「そうですか、ありがとうございます」
「礼を言われるほどじゃねーよ」
「そんじゃ顔見たから帰るわ」
「ええ、気をつけてくださいね」
「はいはい、そんじゃ花霞をよろしく」
ガチャ、と扉を閉めてリビングへ戻ると
階段を降りてきた花霞がいた
「あれ、どうしました?」
花霞は何も言わず、リビングのソファーに座る
先程魘されていたそうだから、それで眠れなくて来てしまったのかもしれない
私は何も言わずにお茶を差し出す
「落ち着いてから寝てくださいね」
花霞はこくん、と頷く
小さな両手でカップを持ちお茶を啜った
カチコチと響く時計がやけに大きく聞こえた