第4章 #4 日常
「…あなたはいつまで居座る気ですか」
まるで自分の家かと思うくらいだらんと
くつろぐ五条に七海は呆れながら言う
「えぇー、お風呂入らせてあげたのにさっさと帰れってか?」
「早くご飯ー」
手足をばたつかせて、好きなお菓子を
買って貰えない子供のように駄々をこねる
これには七海も頭を抱え、隣に座る花霞と五条を交互に見てしまう
「……どっちが子供だか……」
「あ゛?」
「はいはい、ご飯ですね」
七海はもう勘弁してくれと言わんばかりの声色でセリフを投げ捨て台所へ向かった
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少し待っていればスパイシーな香りがふわっと漂ってくる
「はい、出来ましたよ」
そう言って七海が持ってきたのはカレーライス
大人も子供も好む定番料理だ
「うわっ、美味そー!」
「あなたはさっさと食べて帰ってください」
「ええ、俺結局帰んのかよ」
「…泊めるスペースなんてあるわけないでしょう」
「いっただきまーす!」
人の話は全く聞かない五条
それをもちろんのこと七海は分かっているので
咎めず自分も手を合わせて食べる
しかし一方の所、花霞はそもそもスプーンというものを知らない
というかカレーライスがなんなのか分かっておらず
顔を近づけ野生動物のように匂いを嗅ぐ
とりあえず手で…と思い伸ばした手を五条にぐっと掴まれた
「ばか、手づかみで食べようとすんな」
そうは言われるが花霞は〝これ〟をどう食べればいいのか分からない
ん?と首を傾げていれば、五条は自分のスプーンを置き、花霞の右手に手を添えてスプーンを持たせ、「こう食べるんだ」と教える
「……」
その様子を静かに、食べながら見守る七海
「(この人にも優しさというものはあったのですね)」
と心底驚きながらも黙々とカレーライスを食べていた