第2章 柔な舌に釘を打つ
「室長から頼まれた。面倒な奴がいるんだって?」
「はい、その人物についてですが、本当はすぐ事情聴取して他と一緒に退去させるつもりでしたのに、なかなか予定通りに進まなく…今は教会の一室で待機させています」
「どんな奴なんだ?」
「はっ…!申し遅れました。この教会の修道長です」
「…それで?」
たかが修道長で匙を投げ出すほどの理由をまだ聞いていない。ジェイドバインは自分よりひと回りふた回りも大きな男を下から威圧する。部下の前では胸を張れていた隊長も、そのたった一言で頭を垂れ、子うさぎの如く震えだしてまった。
「ひゃ…は、はい!我々が調査している時からひどく興奮している様子でした!何を質問しても聞く耳を持たず、挙げ句の果てに暴れて窓から飛び降りようとして…!AKUMAかどうかの検査をするにも部下に怪我人が出るくらいで…」
「興奮剤でも服用してたんじゃないのか?」
冗談半分で言ったのに、男はあくまで深刻に答える。
「幻覚症状はないので使用していないと思われます。しかし余りに異常なので医者を教団から手配しており…」
ジェイドバインは呆気にとられ、すぐ顔をしかめる。
(何やってんだ…)
彼らは長く居過ぎたせいで、その修道長の異常性に気を取られすぎている。そのせいで本来の目的を見失って貰っては困る。
「必要ない。すぐキャンセルしろ」
「しかし…」
「情報を聞き出すだけだ。そいつの治療は誰かに任せればいい」
「……はい、只今」