第1章 翡翠の刃で刺し殺す
汽車を降り立ったジェイドバインはフードを目深に被り、雲一つない夜空にかろうじて残っている月を見上げる。
「宴の前日に教会で人が亡くなるなんて…、信者はさぞかし憔悴していることだろう」
歩き出すトマの後に付いて行く。遠回りになっても、敢えて人気のない道を通るのは、やはりAKUMAを見分けるためだ。
「全員が自粛ムードではないようですよ。中には祝祭の中止に反対する者もいます」
「ふむ…」
兎にも角にも、コムイから命令された重要参考人から話を聞き出すのが先決だ。
要はとっととAKUMAを破壊しろってこと。
フードの下で妖しげな光を宿すジェイドバインの両眼。その艶美な色彩はこの世のものとは思えない。その異端の瞳が、遠くの一点に焦点を合わせる。奥から滲み出るような翡翠色の眼球に映るものは、一面の小麦畑に囲まれ聳え立つ、ホローライト教会だった。