第7章 大切に、、、
湯浴みを済ませた鈴音は、いつも通り悲鳴嶼に薬を塗ってもらおうと、背を向けて座った。
しのぶに新しくもらった薬が良く効いて、傷跡の赤黒さはほとんどなくなっていた。傷跡が疼くことも、ここのところなかった。しのぶによるとやはり鬼の血が傷にかかって、皮膚に取り込まれた様になっていたらしい。
「、、、大分良くなったな。」
「はい。悲鳴嶼さんと胡蝶さんのお陰です。」
もう一月程薬を塗っていて、薬がなくなれば終わりでいいらしい。
悲鳴嶼の手の中の容器には、ほとんど薬は残っていない。
背中を晒した鈴音は、いつまでも悲鳴嶼が薬を塗らないので、不思議に思った。
「、、、悲鳴嶼さん?」
「、、、あれほど無防備だと言ったのに。」
悲鳴嶼は後ろから鈴音を抱き締めた。左耳を甘噛みする。
「、、、あっ、、ひめ、じま、さん、、、」
「君は甘い香りがするな。」
悲鳴嶼は鈴音に顔を寄せたまま、動かない。
「、、、鈴音。」
「、、、はい。」
「、、、私にこういうことをされるのは、嫌だろうか?」
悲鳴嶼の声が、自信なさげに揺れる。