第15章 12ページ目 弱ったときの特効薬。
再び蹲りながら、目からはぽろぽろ涙がこぼれて床へと落ちていく。
ぱた、ぱたぱた。
雫の落ちる音にさすがに尋常じゃないと感じたのかどうかはわからないが、すぐ横で五条くんがしゃがむような動きをした。続いて感じるこちらを窺うような気配。
「なぁ、…どうした?」
いつもと違う、優しく響いた低い声に、鼻と目の奥がぎゅんと熱くなる。さらに涙をこぼして、情けなく鼻をすすりながらわたしは口を開いた。
「…お……お腹、いたい…」
「ハラ?そんな痛ぇの?」
「…すごく、痛い…」
「っ…下した?薬は?飲んだ?」
「くだしてない。薬は…食べてから、思って」
「食って大丈夫なのかよ?」
「ん、あのね、女の子の…えと、ね…」
なんだろう、どう説明すればいいのかな?
痛みを抱えながら、上手い説明なんて思いつかなくて、頭の中がぐるぐるしてくる。
ああ、もう、いいや。
「生理、なの…だから、食べてもだいじょぶ…」
ずばりそのまま言ってしまえば、何故か今度は返事がなくて。
静かになってしまった五条くんに、どうしたんだろうと痛みが引いた隙にチラと顔を向ければ…
「……五条くん?」
白い肌をきれいに赤く染め上げた五条くんの顔があった。
「……あ、いや…そっか、そ、生理…」
そんな、赤い顔して戸惑ったように言うから。
普段は妙に大人っぽかったり、ものすごく子供だったりするのに、急に同じ歳の男の子っていう反応をするから。
とても意外で、意外過ぎて。
「……ふっ…」
笑いが込み上げてきた。
「ふ…ふふっ…イタタ…うう…」
「笑ったり痛がったり、忙しいヤツだな…ったく」
「だ、だって、ぇ…う…痛い…」
「薬は?痛み止めとか、今持ってんの?」
「ん…ある、持ってる」
コクコクと頭を縦に揺らして、ポケットに入れてきた痛み止めの錠剤を布の上からぽんと叩いて示す。
すると頭に大きな掌が軽く触れて、そっと離れた。
「ちょっと待ってろ」
五条くんはそう言って立ち上がると、冷蔵庫を開けてさきほど見たコンビニプリンを取りだして戻ってきた。