第15章 12ページ目 弱ったときの特効薬。
えへえへ笑いをこぼしていると、嫌そうに眉を顰めた五条くんに額をトストス突かれた。
うふふ、痛くないもーん。
さらに笑い続けていたら、五条くんはチッと大きく舌打ちをして。
「もう大丈夫みたいだな。俺、先行くから」
言うなりさっさと席を立って、一人スタスタと長い脚で素早く去って行ってしまった。
あああ、しまったぁ~~。
ちょっと笑いすぎたかな?
でも、すごく嬉しくて勝手に顔がゆるむんだよ………うん、しかたない。
ほんの少しだけ笑いすぎたことを申し訳なく思いながら、すっかり平和になってきたお腹に手を当てる。
これなら授業にも出られそうだ。
早すぎる時間に目覚めてしまったおかげで、今から部屋に戻って準備しても十分に間に合う。
さっきはキツすぎてぼろぼろ泣いたくらいだというのに、続く五条くんとの時間を思い出せばそれも悪いことではなかったとすら思えてくる。
あのやわらかな微笑みは、優しく温かな手と思いは、それほど珍しく貴重でとても嬉しいものだった。
「んふふ、朝からしあわせだなぁ~」
お腹と腰は少し鈍く重いけど、心はとっても軽い。
お薬が効いたみたいだ。
五条くんには今度お礼をしないとなぁ。
なにがいいかなぁ?
よいしょっと立ち上がって、ゆっくりのんびり歩きだす。
今日もみんなと過ごせる。
楽しみだなぁ。
後で会うだろう五条くんはおそらく少し不機嫌そうで、何も知らない夏油くんは八つ当たりをされるかもしれない。
不思議そうに聞いてくる硝子ちゃんは簡単な説明を聞いて、ニヤニヤ笑いながら「五条、かっこいいじゃんw」なんて煽るんだろう。
想像するだけで口元が自然とほころぶ。
さて、今日も学生するぞー。